大正ロマンで非日常を~憧れのあの時代を旅するブログ~

華やかで儚い大正時代を味わいませんか。

*

中勘助 銀の匙

   

 

51+BN3+uChL

 

家から出てノスタルジックさを求めて旅行に行くこととはまた別に、

子供の時の自分を思い出し懐かしむこともまた、旅行の一つだと

そう感じさせる小説でした。

 

小説?自身の体験談?

おそらく作者の中勘助氏は小説として書くことを意識されていません。

自分が子供の頃に感じたこと、経験したことを

「その時の心情の通りに書く」。

この一点のみに神経を注がれた名作だと思いました。

 

この小説が執筆されたのは明治の最終年と翌年の大正二年。

厳密に言うと大正ロマンの様な華やかさも、

また明治のイメージである文明開化についても

作中では全く言及されていません。

 

作者の中勘助氏を中心とした世界。

幼い頃の伯母や仲のいい友達との遊びや学校生活、

成長して視野が広がり考え方、感じ方が変わり

大人になっていく段階がとても共感できる作品でした。

 

当時の背景として出てくるのは明治の世の中になった今も

出自によって学校へ行けるか丁稚に出されるかの違いがあったこと、

(勘助氏は学校へ、少林寺の友人である貞ちゃんは奉公に出ている)

先生が戦争に取られて担任が変わっているというあたりで、

これらの事も淡々と書かれているのが印象的です。

 

この小説で書かれていることは明治時代の事ですが

大正、昭和、そして平成に生きている私たちが読んでも

充分に共感できる内容だと思うのは、

誰しもが持っている子供の頃の懐かしさやその時の思い出を

当時の気持ちで思い出せるからだと思います。

 

変に私たち読者に共感をしてもらおうと思って書いているわけではない。

当時の記憶、思ったことをありのままに書いているからこそ

どの時代の誰が読んでも共感できる内容になっているんだと感じます。

子供の頃の思い出を持たない大人はいませんからね。

 

私はこの小説を読みながら自分の小学生時代を

思い出していました。

すでに平成に入っていましたがまだ1990年代前半で、

2015年現在と比べれば昭和の雰囲気に近い子供時代を過ごしました。

(しかも京都の割と田舎の方だったので。)

 

伯母に連れられてお祭りやお寺、色々な所に連れられる勘助氏、

同じ年の友達ができて学校という場で共に成長していく勘助氏と

自分を重ね合わせて何ともノスタルジックな気持ちになりました。

読み終わった今でもその余韻に浸っているところです。

 

思えば内容というよりも

読みながら自分の子供時代の思い出を楽しむ、懐かしむことできるのが

この小説の最も素晴らしい所なんじゃないかと思います。

 

 

子供時代に訪れた京都、大阪、神戸が無性に懐かしくなりました。

こういった作品を読むととても旅行に行きたくなります。

好奇心を持って新しい場所に行くことも魅力的ですが、

自分にしかない思い出や懐かしさを持って

自分を育ててくれた場所を訪れてみるのも旅行の魅力です。

 

昔、よく遊んだ場所、通った場所にご無沙汰になっていませんか?

昔を懐かしむ、そこへ旅行する、ということのキッカケを作って

背中を押してくれるような小説でしたよ。

ノスタルジーを感じたい方にはぜひ一読してほしい作品です。

 

 - 小説 ,

フォレックス・ドットコムクチコミ情報