大正ロマンで非日常を~憧れのあの時代を旅するブログ~

華やかで儚い大正時代を味わいませんか。

*

皆川博子 蝶

   

 

51gg5bPMZfL

 

大正、昭和、平成に出された小説等の詩や出典を題材に書かれた

八つの短編小説です。

 

全体的に戦争を背景とした薄暗く悲しい背景を感じさせますが、

そんな中生きる人たちの心情や考えがいくつもの目線で語られている作品です。

 

一つでは登場人物の目線から、一つでは第三者目線からと

違う見方ができるのも、この短編小説の面白い所でした。

 

 

具体的な事象を抽象的な、幻想的な世界に引き込むのが

とても上手い作品だと感じました。

「想ひ出すなよ」「遺し文」といった子供目線で

具体的、現実的に描かれている作品から、

「艀」「蝶」「妙に清らの」から感じる

現実と幻想の境目が曖昧に書かれている描写など、

バラエティに富んでいて引き込まれます。

 

最初は読んでいると分かりにくかったりしました(^-^;)

主語が曖昧で、どの目線で話しているのかが分からなくなるような。

でも最後にはなぜか腑に落ちてしまう。

そんな感じを覚えました。

 

曖昧で抽象的で幻想的な程、分かりにくく、

でも一旦腑に落ちると強烈に入ってくる。

独特で理解しにくい文体だと思う方もいるかもしれませんが、

全てがそういう短編小説ではないので

読み始めらなら一度だけでも最後まで読んで見られることをおすすめします。

 

(私も一瞬途中でやめよっかなと思ったのは内緒・・・

だって分かりづらかったんで。)

 

 

どの内容にも共通しているのは

物語が淡々と進んでいき淡々と終わること。

短編小説では珍しくないことかもしれませんが、

それゆえ次の話にスムーズに入れる感じがしました。

 

書き手の目線、立場、物語の内容のどれも違うのに

戦争の薄暗い印象や当時の習慣を背景に

子供が持つ「よく分からないけどどうしようもない不安」というのが

とても伝わってきました。

 

この短編集のタイトルにもなっている「蝶」以外、

どの項も全て子供目線で語られていることに

読み終わってから気付きました。

タイトルを唯一大人目線で語られている蝶と付けられたのは

偶然でしょうか。

 

この物語全体を通して伝わってくるのは

子供の喜怒哀楽でした。

以前中勘助氏の「銀の匙」についても書かせていただきましたが、

「蝶」は一人ではなく多数の違う立場からの子供の目線から書かれているのが

面白かったです。

 

フィクション、ノンフィクションという違いがあり

また自叙伝風、独特の文体という違いがありますが、

子供というのは大人が思っているよりも多くの事を考えている、

理解できているということが両方の作品から思い知らされます。

 

時代が時代なのでなかなか思いのままを外に出せないという辛さが

昔の子供にはあったと思います。

(家で一番偉いのは父親、年上のすることには服従、

先生の言うことは絶対など。)

 

そんな時代背景を当たり前として、その中でも

楽しさや興味を見つけて生きて行く当時の子供たちは

本当にたくましかったと思います。

今の時代では考えられないですねぇ~。

 

 

少し本の内容から逸れてしまった感想もありますが

単純に興味深い作品だったと思います。

分からない部分は飛ばして読めると思った部分だけでも

読めるのが短編小説のいいところです。

(本当は一度全体を通して読んでみてほしいですが。)

 

大正からは少し外れますが儚さや寂しさは充分に感じられるので、

気になった方はぜひ一読してみてください。

 

 - 小説 , ,

フォレックス・ドットコムクチコミ情報