大正ロマンで非日常を~憧れのあの時代を旅するブログ~

華やかで儚い大正時代を味わいませんか。

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栗本薫 墨染の桜

   

 

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大正末期から昭和にかけての華族が中心になった小説です。

美少年の華族「大導寺乙音」と同じく華族の「妙連院笑子」の二人が中心の

未だ知られないミステリーの要素を含んだラブストーリー、

の様であったと読んでいて感じました。

読む人によっては解釈が変わってくるのでしょうが。

 

他の六道ヶ辻はもっとエグい描写がされていると言われるので

どんな内容なのかとても気になります。

 

 

あらすじは80歳になった笑子女史のもとに

物語の重要人物の孫である「藤枝直顕」と

乙音の甥孫である「大導寺静音」が訪ねて行くところから始まります。

そして笑子女史の60年もの時を経ていまだ解決しない謎を

笑子女史の話を聞きながら直顕が解決していくというストーリーです。

 

物語の約8割が回想シーンで後半の2割で謎が明かされます。

その回想シーンの中身が中々エグい。

いや、このシリーズを読まれている方にとっては何でもないことかもしれませんが

初めて読む人からすると好き嫌いが分かれる部分かもしれませんね。

 

今でいうボーイズラブでしょうか。

古来から衆道、男色という言い方がされてきた部分が

物語の大きなバックグラウンドになっています。

乙音が直顕の祖父である清顕を好きになるところが物語の重要な要素です。

それにしても笑子女史の性癖や妄想がぶっ飛んでいます。

 

物語自体は回想シーンは笑子女史の視点で話され

登場人物の性格や心情も良く分かるように書かれていました。

淡々と論理的に分かりやすく書いてあるのでスッと自分の中に入ってくる感じでしたが、

何度も同じことを繰り返さず本筋に行ってほしいと思う人には

少々回りくどい書かれ方をしているかもしれませんね。

 

 

華族や許嫁といった制度や激しくなってくることが予感される戦争など、

この点は他の大正、昭和初期が舞台の作品と同じように

寂しく暗い未来を暗示させる時代に向かっていきます。

そのなかで人それぞれの思惑や事件が絡まる回想シーンは、

非常に長いはずだったのにとても自然に入ってきました。

 

この小説は単なる女性の回顧録ではなく

長年持っていた謎が解き明かされる部分が本筋です。

他の六道ヶ辻シリーズも同じような内容なんでしょうか。

 

いくら回想では悲しい事実があったとしても

そこに謎があり事実が分かりさえすれば、

それは聞いている人、読んでいる人にとっては最高の結果になります。

たとえ真実がどれほど辛くて自分の思っていることと違っていたとしても。

結局、自分が納得できるかどうかというところが一番大事なんですね。

 

その証拠にラストで笑子女史は

事実を知ってから間も立たないうちに亡くなっています。

乙音が迎えに来たという表現がされていますが

真実だと思える答えが知れたことが一番大きかったのでしょう。

 

 

街中の風景など時代背景の描写があまりないことで

大正時代を感じるところはあまりないかもしれません。

(着物や袴、振袖といった少女の装いくらいでしょうか。)

ですが戦争の一言でどんな時代なのかが想像できてしまうのも

それはそれで悲しいですよね。

 

この時代の小説に恋愛や結婚という描写が多いのは

その陰鬱なイメージを少しでも払拭できる一つの要素だからでしょうか。

(乙音も清顕も笑子の友人の南条蘭子も美形設定。

どうして大正・昭和時代の作品にはかくも美系ばかりがあらわれるのか。)

 

ミステリー小説では良くある、最後の最後で真実がパターンが好きです。

そしてこの小説でも一番大事な部分は最後に明かされます。

中心の場面が大正・昭和に設定されているだけで少し残念には感じましたが、

(もっと大正ロマン的な所が感じられると思ったので)

推理小説やミステリーが好きな方には面白いと思える一冊だと思います。

 

 

「新古今和歌集は古今和歌集を人工的に蘇らせているのであって

その時のみやびさや風流は損なわれている」

というような解釈をされていることも面白いと感じました。

 

ですがそういう解釈だと過去の事は現代では

決して蘇らせれないということになってしまいます。

実際、本当にそうだとしても

今を生きている人が自分の心の中で当時の風景を感じられたなら

それが当時とは別物だとしても心地いものだと思います。

 

そのために小説、漫画、映画、旅行というものがあり

かつて過ぎ去った時代を今でも楽しむことができるのではないでしょうか。

 

あ~、旅行に行きたくなってきたな~。

 

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